株式会社出前館は、2021年9月13日開催の取締役会において、海外募集による新株式発行及び自己株式の処分並びに 第三者割当による新株式発行(以下、海外募集による新株式発行及び自己株式の処分を「本海外募集」といい、第三者割当による新株式発行を「並行第三者割当」という。)を行うことに関し決議した。
Zホールディングス(HD)などへの第三者割当増資と本海外募集で約800億円を調達する。新型コロナウイルス禍で料理宅配市場が拡大するなか、シェア拡大に向けた配達員や加盟店の獲得を急ぐ。
同業の「ウーバーイーツ」との競争が激化するが、時価総額の約半分に相当する資金調達で攻めの投資にでた。
第三者割当増資ではZHDに最大2274万株、韓国ネイバーに最大1664万株を割り当てる。資金調達額を約800億円とするため、ZHDは現状の実質的な保有割合(38%)を上回る場合でも第三者割当増資を引き受ける契約を結んだ。
最大2274万株すべてを割り当てた場合、保有割合は約42%となる見通しだ。
公募増資は欧州やアジアを中心とする海外で実施する。最大1605万株を新たに発行し、合わせて自己株式324万株を処分する。
公募増資と第三者割当増資などで増加する株式数は最大5543万株で、現在の発行済み株式総数の約65%にあたる。
オファリングストラクチャー
出前館の資本相関図
【使い道】
800億円の調達額のうち、650億円をマーケティングにかかる運転資金に使う。
テレビCMなど広告宣伝費やクーポンに投資し、配達員や利用者、加盟店を増やす。
100億円はサイトやアプリのシステムの改善などに充て、50億円は配達員の増強に向けた採用費用に充てる。
【株式会社出前館の取り組み】
株式会社出前館は、「デリバリーの日常化」という世界の実現に向けて、出前館の拡大に向けた取り組みを加速してきた。
2016年8月より、デリバリー機能を自社で有さない飲食店がデリバリーを開始出来ることを目的として、シェアリングデリバリー®事業を開始した。
2020年上半期に始まった新型コロナウィルス感染症拡大を契機とした巣ごもり需要の高まりを受けて、フードデリバリーサービスに対する需要は急拡大し、飲食店でのデリバリー参入が大幅に進んだ。
株式会社出前館では、現在のフードデリバリー市場の成長は、新型コロナウィルスの一過性のものではなく、ライフスタイルの変化によるフードデリバリーの浸透率の上昇が背景にあると考え、今後も持続的な市場の拡大が見込めると考えている。
【アクティブユーザー数650万人/ 74,000店舗】
出前館は、2020年3月にLINE 株式会社(以下「LINE」という。)との間で資本業務提携契約を締結し、LINEとの連携強化を行うことで、同社の「出前館」事業は、2021年5月31日現在、74,000店舗を超える加盟店及び650万人を超えるアクティブユーザー数(直近1年以内に利用した「出前館」ユーザー)を有し、全47都道府県でシェアリングデリバリーを展開するなど、フードデリバリー業界の中で国内最大規模の地位を確立することでデリバリーのエコシステムが充実化しつつある。
また、LINE ID との 連携を行うことで、元々ファミリー層に強かった出前館に LINE ユーザーによる利用が加わった結果、 20代をはじめとした若年層の利用が進み、より身近なサービスになりつつある。
【Zホールディングス及びアスクルとの実証実験】
2021年7月には、株式会社出前館、Z ホールディングス株式会社(以下「ZHD」という。)及びアスクル株式会社(以下「アスクル」という。)の間で日用品や食料品を即時配達する「PayPay ダイレクト by ASKUL」の実証実験を開始した。
経済産業省が発表した 2020年の BtoC-EC市場規模(物販系分野)は12兆2,333 億円と大規模であり、今後ますます需要の増加が期待さる。
株式会社出前館、ZHD 及びアスクルは上記の実証実験により、配達先のラストワンマイルの即時配達ニーズを把握するとともに、取扱商品の拡大や他の地域及びサービスでの展開を検討し、さらなるユーザー体験の向上に努めている。
また、株式会社出前館は、デリバリー事業の拡大に努め、即時配達のインフラとなることを目指すという。
【競合について】
2016 年に国内フードデリバリー市場の成長性に着目した海外大手フードデリバリー事業者が 国内市場に参入して以降、特に直近1-2年の新規参入者の増加を背景に、競争環境は厳しさを増してきており、株式会社出前館を含めた国内フードデリバリー事業者は激しいユーザー、加盟店、配達員の獲得競争の最中にある。
他方、厳しい競争環境のもと、かかる獲得競争の継続が困難となり、一部事業者(Chompyやfoodneko)の撤退や事業統合など、業界の合従連衡の兆しも見えてきている。
【将来展開】
このような環境下、株式会社出前館が将来に亘り順調に成長していくためには、より一層のユーザー、加盟店及び配達員の獲得を進めることによって圧倒的な市場シェアを獲得することで収益性を高めていき、プロダクト改善によるユーザー体験の向上、加盟店売上高の増加、配送効率の向上を実行すること。そして、流通量 No.1のプラットフォームとしての地位を揺るぎないものとすることが肝要であると考えている。
そのうえで、今後想定される国内フードデリバリー業界における合従連衡をリードする立場になるべく、更なる市場シェア拡大策及び成長投資の実行が不可欠である考えている。
かかる資金需要に対応するために、株式会社出前館は、新株式の発行及び自己株式の処分を通じて、総額約800億円の資金調達を行うことを決議した。
株式会社出前館は、本海外募集を通じて広範な投資家からの需要を募ることで、調達金額の最大化を図りつつ、海外機関投資家を中心とした株主構成の一層の多様化と、株式の流動性の向上を図る。
ZHD及びその傘下のLINE(以下あわせて「ZHD グループ」といいます。)とは、既に LINE/Yahoo! JAPAN プラットフォームを通じたユーザー獲得の促進及びユーザー獲得コストの低減といったシナジーを実現している。
上記の「PayPay ダイレクト by ASKUL」などの拡大を検討していることから、ZHDグループが現状の出前館株式の実質保有割合38.29%(LINEの株式保有割合35.79%及び未来 Fund有限責任事業組合の株式保有割合24.99%のうちLINE の持分に相当する10%分の合計値)を本海外募集の後も引き続き保有し、上記シナジーの最大化を追求可能な形態で資金調達を行うことが、当社の企業価値向上に資すると判断し、ZHDを割当先とする並行第三者割当を行うこととした。
なお、ZHD は、株式会社出前館の資金需要を最大限サポートする観点から、今後の株価動向にかかわらず本資金調達の総額約800億円を維持することを目的として、株式保有割合が上記の現状の実質保有割合を上回ることとなるとしても上限22,740,700 株までの範囲で並行第三者割当の申込みを行うことを、株式引受契約(以下「本株式引受契約(ZHD)」といいます。)において約束している。
ZHD グループが上限22,740,700株の並行第三者割当の申込みを行った場合、ZHDグループの株式会社出前館株式の保有割合(LINE の保有割合との合計値)は最大で 41.99%となる見込みだ。
本株式引受契約(ZHD)においては、上記のほか、株式会社出前館及びZHD がそれぞれの企業グループが持つ強みを一体化させることにより、国内フードデリバリー市場において流通量 No.1 を達成するとともに、 今後、日用品領域その他のフードデリバリー以外の領域においても事業の拡大を図るため、人材の提供、 送客、サービス連携等の検討を行うことを合意している。
さらに、株式会社出前館は、2021年2月28日現在における当社の第2位の主要株主(株式保有割合:24.99%) である未来Fund 有限責任事業組合の持分の90%を保有する NAVER Corporation(以下「NAVER」といい ます。)に対しても、引き続き安定株主として当社の経営を支えてもらう観点から、その実質保有比率を概ね維持できる数量として、180億円に相当する株数の並行第三者割当を行うこととした。
なお、NAVER は、当社の株式の取得のために外国為替及び外国貿易法に基づく手続が必要になることから、並行第三者割当に係る申込み及び払込みの時期及び数量につき、株式引受契約(以下「本株式引受 契約(NAVER)」といいます。)において、本海外募集及びZHD に対する並行第三者割当とは異なる合意をしている。